読了本

おまえさん(上)

おまえさん(下)

おまえさん／宮部みゆき
『ぼんくら』『日暮し』の続編。安定感があるなあ。これだけ長いんだからそうでなくちゃ困るか。面白い、んだけどとにかく長いよ宮部さん。決して冗長ではないものの“たいそうふくよか”ではあるよな。伏線の取りこぼしがないのはさすが。エンタメならかくあるべしと思う。ただ宮部作品はいつもそうなんだが、後味はあんまり良くはないのだ。基本的に飄々とした平四郎視点だから軽みはあるし、ところどころ楽しくて爽やかではあっても、クライマックスで瞬間的にものすごい苦味を味わわされるとその印象が強く残ってしまう。タイトルの意味も分かってみると苦いよねぇ……。にしても平四郎がいつにもまして恋愛脳だったような（笑）。それでまずいことにもなっちゃってたなぁ。信之輔の迷走っぷりには胸が痛んだ。おしんの失恋にももらい泣き。お六にしろおでこにしろ、ひとつくらいまともに成就する恋があってもよかった気がする。そうならないのが宮部さんのシビアさでありダークサイドなんだろうか。あ、伏線とりこぼしないって書いたけど、あっちもこっちもちゃんと落ち着くにはまだまだシリーズ続けてもらわないとだなー。落ち着いたのってご隠居くらいじゃない？