読了本

夜明けの風 『夜明けの風』ローズマリー・サトクリフ/灰島かり訳(ほるぷ出版、2004)。
灰島かりの訳文はみずみずしくて歯切れがよく、響きもきれいでとても読みやすい。主人公の過酷な体験を淡々と綴りながら、静かな迫力で感動を呼び起こす筆致はサトクリフ由来のものではあるのだろうが、ナイスタッグだと思う。どの章も緊迫感に満ちており、何がおこるか一時たりとも気が抜けない。とくに“古き王が新しき王にとって代わられる”場面ではしばらく涙が止まらなかった。いったいぜんたいオウェインに幸せの訪れる日は来るのか、最後の最後までハラハラしどおし。以前読んだ『ケルトとローマの息子』でも同じ体験をしたものだ。これだからサトクリフはやめられない。

『君の瞳に三日月』桑田乃梨子白泉社花とゆめコミックス、1995-1996)。
『真夜中猫王子』桑田乃梨子白泉社花とゆめコミックス、2000-2001)。
さすが猫好きの作者、期せずしてか計画的なのかどちらも「人が猫になってしまう」話だ。『君の瞳に三日月』は生物教師の謎の薬のおかげで“ネコが近づくと自分もネコに変化する体質”となった文治が主役のドタバタラブコメ。タイトルにもなった作中話と文治がみた将来の夢がかわいい。
『真夜中猫王子』はタイトルそのまんまだ。“昼間はネコの人形、夜は着ぐるみネコになってしまう”呪いにかけられた異世界の王子ご一行を女子高生の駒音 澄が助太刀するファンタジックラブコメ。おむらさんのオススメ作品だけあって面白かった。なんともいえない味があるね。王子かわいいし。『ラッキー!』に入ってた短編はこれが元ネタだったのか。ヒロインの名前が可愛いなあと思っていたので、あとがきの種明かしには苦笑い。