読了本

阿蘭陀西鶴

阿蘭陀西鶴

阿蘭陀西鶴朝井まかて
ものすごく面白かった。物語に入り込み過ぎて、ラストは思わず涙ぐんでしまったよ。娘の視点から父親の姿を描く……のだが、娘のおあいは目が見えない。聡いけれど頑なな彼女の心の成長がまず見どころのひとつ。そして父親である井原西鶴がとにかく破天荒でパワフルで人間臭くて、思わず笑ってしまう。『好色一代男』面白そうだなぁ……。そんな西鶴も本当は騒がしいだけの人間じゃなかった、と気づく流れがしみじみいい。大坂ことばの会話は、たぶん万人向けに薄めてあるんだろうとは思うが、とても親しみやすく分かりやすい。彼らの生きた江戸初期の大坂の空気がイキイキと伝わってくる。大阪出身の作者ならではだ。料理が美味しそうなのも楽しかった。

本所おけら長屋(三) (PHP文芸文庫)

本所おけら長屋(三) (PHP文芸文庫)

本所おけら長屋 三/畠山健二
江戸庶民の暮らしぶりを描いた市井もの。巻を重ねるごとに人情落語テイストに磨きがかかっているが、泣かせはそこそこでもう少しドラマチックなほうが好きかな。魔がさすとはこういうものかとヒヤリとさせられた「ふろしき」がよかった。あと万造と松吉は安定のおバカっぷりで楽しい。このシリーズ、今後もコンスタントに出るといいなあ。