読了本

蒲生邸事件 前編・後編/宮部みゆき著、黒星紅白
歴史SFミステリー。書かれてからもう20年ちかく経つんだなあ。でもタイムトラベルものという好みのジャンルにもかかわらず宮部作品の中ではあまり好きではなかった。主人公の孝史がなんだか自分勝手というか、ずうずうしいというか、そんなふうに思えて親しみが持てなかったせいだ。ふきが可愛いとか言ってる場合かお前?! けど青い鳥文庫に入ってステキな挿絵もついて読みやすくなった今が認識をあらためるチャンスなのではないか、と思い再読。ああ、やっぱり面白いや。孝史に共感はできなくても、彼の行動は理解できる。今はどちらかといえばタイムトラベラーの業を背負った平田や黒井に共感するな。昭和史の側面からも興味深いものがある。昔は昭和史に興味がなかった……いまもさほど好きではないにせよ、知識が増えているぶん味が分かる部分も多くなっているのだろう。読み返すと新たな発見がある、別の視点で読める物語はいい物語だ。子どもの頃はアン目線で読んでたのが大人になったらマリラの気持ちがしみじみ分かるようになる、そんなふうにこの物語もさまざまな方向から楽しめる。さすが名著と言われるだけある。