読了本

残穢

残穢

残穢小野不由美
どこまでが現実で、どこからがフィクションなのか。語り手の「私」はまんま小野さんなんだが、というある意味“捨て身”な実話系怪談。109ページあたり、ヒエッと声が出ちゃったよ。やっぱり短編群より長編のほうが面白いな、調査が進むにつれ怪異が有機的に繋がっていく、とか思っていたらあまりにも怪異の伝染力が強くて、最後の方は怖いを通り越してちょっとうんざりしてしまった。いったいどこまで行くんだ……。ノロやインフルの変異型ができて手に負えなくなるのとそっくり。下火にはなっても永遠に消えることはないのだろうか。それにしてもこれ、もとは渋谷サイキックリサーチの案件になるはずのネタだったのではないかなぁ。麻衣や安原さんがかけずりまわって調査する姿が目に浮かぶようだわ。そんでクライマックスではぼーさんや綾子が派手なアクションを披露してそれなりにスカッと幕引き……だったらよかったんだけど、こちらはモヤッとしたままページが尽きて、ぼんやりした不安を抱え込まされたままになるのがどうにも落ち着かない。残穢に触れて感染したり劇症化したりするのは、インフルなんかと同じく当人の「免疫力」「耐性」がものをいうのかな。知らないうちに触れちゃっても、私なんかきっと……うわあもう、嫌だなぁぁぁ。

魔神館事件 夏と少女とサツリク風景/椙本孝思
館もの。途中まではかなり面白かった。えーっと、種明かしの手前まではね……。読み終わってポカーンとしてしまった。けどなんか憎めない。たぶんもっと終盤をこってり肉付けしてあったら納得できたのかもなあ。やけにあっさり説明されて終わりだったから、そんだけ? って思っちゃったもんね。実際に作動させてみせるくらいしてくんないと。でも割と過程を楽しめたからいいや。ハテナも可愛かったし(toi8さんの表紙絵は秀逸)。 彼女と黒彦くんとの夫婦漫才は悪くなかったよ、うん。でもありえんよなー。犬神博士のホラじゃないのかな。