読了本

先生のお庭番

先生のお庭番

先生のお庭番/朝井まかて
シーボルトの御庭番=スパイ、かと思ったら普通に庭師だった。骨身を惜しまず働く熊吉が次第に認められていくさまは楽しかったし、奥方の生き生きとした描写もよかったけれど、その後の顛末が非常に切ない。同じように日本とその自然を愛しているはずなのに、感性の微妙な齟齬が気持ちをざらつかせる。異国人との間に横たわる深くて昏い亀裂、ふだんは造作もなく飛び越えられるけれど、気を許していると足をすくわれる……。まあでもシーボルトがそういう人だっただけかもね、ハーンなんかは虫の音を愛したというし。にしても、ラストのように過去の痛みを水に流す姿はとても日本的だなあと思った。あ、あと「でんでらりゅう」の歌、ちょっと前にCMでやってたねえ。

運慶―リアルを超えた天才仏師 (とんぼの本)

運慶―リアルを超えた天才仏師 (とんぼの本)

運慶 リアルを超えた天才仏師/山本勉、ヤノベケンジ、橋本麻里、みうらじゅん
山本さんって『仏像のひみつ』の方ですね。それでみうらじゅんとか、全方位死角なしって感じ(ちなみに南伸坊もイラスト描いてた)。説明のなかで「火災で焼失。現存せず」ってただし書きがつく仏像の多いこと。うわ〜という気持ちになった。いま観てる「清盛」の時代と運慶の活躍時期がかぶるんだけど、来週は運慶に大きなチャンスを与えたという「南都焼き討ち」が出てくるのかしら……。