読了本

恋細工 (新潮文庫)

恋細工 (新潮文庫)

恋細工/西條奈加
これ、読んだつもりでいたら未読だったみたい。表紙(ハードカバー版の見返り美人)には覚えがあるのに中身は読んでも読んでも覚えがないから変だなあと思った。寛政の改革という厳しい時代を背景に、職人の世界を描いた本格的な市井もの。派手さはないけれど主人公お凛の心の変遷は細やかかつドラマティックで、錺師(かざりし)とその仕事についてもしっかりした取材がなされているので、とても読みごたえがあった。もうひとりのヒロインであるお千賀が活躍する神田祭のくだりは燃えたし、ラストシーンはほろ苦くも爽やかで印象に残った。ちょっと『壬生義士伝』を思い出したよ。