面白かった。しかし「あの」
木地雅映子がこういう作品を書いたことにはかなり驚かされた。ハードカ
バーとして出た『愉楽の園』は未読だが、次に出る作品は少なくともさらに
ライトノベル的なものからは遠ざかるのかな、と予想していたので何だか嬉しかった。かつての木地作品の主人公は孤高の存在であるがゆえに孤独だったけれど、孤高の存在がたくさん集まればもう孤独じゃない、そんな方向に話がシフトしているのはよい変化のように私には思えた。それでも登場人物たちはおのおの自分のなかに抱える孤独と向かい合い、戦ってはいるのだが（そして戦わない大人がひとり……）。そのあたりの描写の冷徹さはとても
木地雅映子らしい。語り手を順繰りに変えていくスタイルなのでいいところで話が切れてしまい、少々食い足りない感じも残るが、巻が続けば不満も解消されるだろう。でもよーこ先輩はもう出てこないのかな。よーこ先輩視点の話も読んでみたい。それにしても解説の
三村美衣さんはほんとに木地作品を愛してるよねぇ。
