読了本

利休にたずねよ

利休にたずねよ

一介の商人から茶頭として登りつめ、最後には秀吉に切腹を命じられ果てた千利休。彼の作り出した「艶のある侘び茶」の根底にはある女への秘めた思いがあった……。
語り手をかえてじわじわと時を遡っていく、そのミステリアスで清々しい緊迫感にしびれた。またどの語り手の章も面白いんだこれが! 語り手となるのは今数えたら全部で14人だった(利休は名前が変わっても同じ人物としてカウント)。語り手が違うと発する雰囲気もどことなく違ってくるのは、作者がそれぞれのキャラクターを我が物としてるからなんだろうな。利休に対する印象も語り手によって微妙に違っているのが面白い。石田三成の章の嫌味ったらしさと、あめや長次郎の章の知らずして秘密に肉薄する感じがよかった。秀吉の人物造形もうまい。あとこの人の文章は私にはすごく読みやすくて、するする頭に入ってくる。
今年(第140回)の直木賞候補になってるんだが、受賞したら嬉しいなあ。メッタ斬り!選考会で「『私の男』の時代小説版のよう」とコメントされてるのが言い得て妙だった。
追記(2009/01/16)。直木賞とった! めでたい!