読了本

wonder wonderful 上 (レガロシリーズ)

wonder wonderful 上 (レガロシリーズ)

wonder wonderful 下 (レガロシリーズ)

wonder wonderful 下 (レガロシリーズ)

気付けば深夜2時3時コース……。時間を忘れて没頭してしまうことも、途中では止められないこともサイトで読んでたころに証明済みなのに、分かっててやってしまう。それくらい本のかたちで読めるのがうれしい。異世界ファンタジーというのは成長物語と相性がよくて、主人公のティーンエイジャーが若さ故にとんでもないことをしでかしては身をもって学んでいく話が多い。けれど中にはすでに成長を終え人格が形成されてる大人が困難な状況に挑んでいく物語もある。ビジョルドのチャリオンシリーズとか、この『wonder wonderful』とか。
主人公のこかげは誕生日を迎えると28歳という妙齢ながら、妹のために異世界にとびこんでいく逞しくて繊細な女性だ。カルチャーショックの洗礼を受けながらも働かざるもの食うべからずの精神で足場を築き、人脈の輪を広げていく。失敗したり壁にぶつかったり落ち込んだりもするが、青少年といい年した大人とではやはり対処のしかたも違ってくる。運や勢いに頼らず周到な用意で事態を動かそうとし、自分の気持ちをおいてでも周囲の気持ちをはかり汲もうとする社会性。そこらへんの微妙なさじ加減が面白さのゆえんである。
いやー、続編が読みたいよな。家に帰ってくるまでが冒険です! とはいいながら、おあずけくらった隊長があまりにもかわいそう。彼の思いについては初版限定特典ページに掲載の短編で補完できるのだが。各巻巻末についてる書き下ろしはこかげ以外の視点で書かれてるのが新鮮だった。ヨーサムがいちばん好きなので番外編「彼女の護衛たち」は嬉しかったなぁ。叶うことならひなたの前日譚も読んでみたいし。河上さん職業作家になってしまえばいいのに……(ぼそ)。