読了本

グリーン・ゲイブルズで過ごした少女時代を経てアヴォンリーに根を張った娘へと成長するアンの姿を描いたシリーズの第2巻。世間一般には夢見がちで少女趣味な物語とのイメージが先行しているが、ユーモア文学としてはかなりのものだ。ページをめくると目に飛び込んでくる「追伸 公会堂は、けばけばしい青です」には不意打ちをくらって吹きだしたし、美しいプロポーズの言葉がじつは礼儀作法大全からの丸写しなのがばれた青年のくだりは辛辣さを滑稽味でくるみこんであって思わずニヤリ。
想像力旺盛なアンの振る舞いも意外と客観的に描かれているので、共感はしないまでも「こんな子がいたら毎日が面白いだろうな」と微笑ましくなる。個性の強い村人たちも魅力的だ(とくにリンド夫人やハリソン氏)。なにげないエピソードやセンテンスがしみじみ含蓄ぶかいのも、さすが長く親しまれてきただけのことはある。松本訳には古典や英米文学からの引用について詳細な注記がついているのも楽しみのひとつだ。続きはまだ訳出されないのかな。