読了本

デジデリオ ―前世への冒険― (集英社文庫)

デジデリオ ―前世への冒険― (集英社文庫)

読書相談室からの発掘本。「デジデリオというルネッサンス期に活躍した美貌の彫刻家」があなたの前世だ、と言われた作者がイタリアまで検証にいっちゃうエンタメ・ノンフィクション。夢物語が次々に実証されてくのが面白くて一気に読んだ。肝心なところがロマンの彼方にぼやけたままなはちょっと残念だが、500年前のプライバシーはさすがに探れないよね……探っちゃいけないような気もするし。
私が読んだのは集英社文庫版だけど、単行本のときはデジデリオラビリンス―1464・フィレンツェの遺言というタイトルだった。のちに光文社文庫前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って (知恵の森文庫)として収録されたが、これじゃスピリチュアルものと誤解されそうだなー。この本では食い足りないくらいスピリチュアルっぽさを排除してるというのに。作者をはじめみな前世ビジョンには懐疑的だし。前世が見える清水さんはさばさばとした職業婦人でとてもチャーミングだ。うーん、なんてあっけらかんとしてるんだろ!

ポカパック島の黒い鞄 (扶桑社ミステリー―セーラ・ケリング・シリーズ)

ポカパック島の黒い鞄 (扶桑社ミステリー―セーラ・ケリング・シリーズ)

シリーズ第9巻。8,9作目は扶桑社ミステリーへと移り、また創元推理文庫に戻るのだが、この片岡訳はくだけすぎなのが玉に瑕。エマおばは「ゲロを吐く」とか品のない言葉は使わないと思うのよ。物語は番外編的な扱いで、主人公は名門の未亡人エマ。孤島で殺人事件が起こるものの、雰囲気は信じられないくらいのんびりしている。殺人鬼は誰!?なんて疑心暗鬼にかられて騒いだりは誰もしない。そこがコージーのコージーたるゆえんか。セーラたちが寄こした助っ人には思わず喝采を叫んだ。彼女が主人公の話も書かれたらいいのにな……おしゃれの描写もたっぷりで。