読了本

彼岸花―秋山久蔵御用控 (ベスト時代文庫)

シリーズ第６弾。この巻は今まででいちばん面白かった。脂がのってきたなあという感じで嬉しい。とくに良かったのは「美人局（つつもたせ）」だが「妻敵討（めがたきうち）」の回も捨てがたい。悪党には容赦しないのがこのシリーズの持ち味だけれど、人は生きていれば必ず過ちや罪を犯す。そういうところは許す懐の深さ、はからいの優しさにほっとする。お蝶に仇は討たせるけれども人殺しはさせないあたり、作者の筆は抑制がきいてて気持ちがいい。新八郎の運命は哀しかったが、こういう乾いたニヒルさもこのシリーズの持ち味。