読了本

名短篇、ここにあり (ちくま文庫)

名短篇、ここにあり (ちくま文庫)

小説通のふたりが選んだ粒ぞろいの短篇アンソロジー。なかでも黒井千次「冷たい仕事」は不思議な味わいで印象に残った。出張先のホテルの一室で魅入られたように冷蔵庫の霜取りをする二人のサラリーマン。何てことないようだが妙におかしく、忘れがたい一編となった。井上靖の「考える人」もちょっと似たところのある話で、即身仏の身の上をなかばとり憑かれたように、なかば親身になって考え続ける人々の姿が面白かった。「誤読」は解説対談を読むまでまったく逆の意味にとってたな……。