教師をしながら未婚の母として子どもを育てているアンと、戦争で体に障害を負いつつも自立した暮らしを営んでいるシドナム。それぞれ回復不可能なまでに深い傷を心身に受け、孤独にさいなまれているのだが、彼らに傷をなめあうような弱さはない。苦痛に背を向けず、忍耐づよく克服しようとする。華やかな盛り上がりはないけれど静謐で哲学的な印象を残す
ヒストリカルロマンス。私の短い読書歴のなかで、出会い前にここまでいろんな方向から痛めつけられてるロマンス主人公たちは初めてだった。読み応えがあって面白かった。
ぐはっ。プロローグで幼く無垢な令嬢が夫の変態爺に調教されるんだが、ヒロインの悲劇性を強調するにしてもこれは……。ヒーローは彼女を愛するあまり
拉致監禁して心の傷を癒そうとする。愛があれば何やってもいいのかっ、でもってヒロインは極度の男性恐怖症が治っちゃうのかっ。全米ロマンスファンを魅了した
ヒストリカルの名作「夜トリロ
ジー」第一弾、だそうだが残りもこういうテイストなんだろか。けっこう面白かったが『ただ愛しくて』の繊細かつ丁寧な心理描写の後だけに展開の奇抜さがちょっと気になった。