読了本

納骨堂の奥に (創元推理文庫)

納骨堂の奥に (創元推理文庫)

クラウドだからコージーミステリなのかと思っていたらかなりシリアス……。でも予想以上に面白かった。地元の名士でくせ者揃いのケリング一族のなかで小娘的な扱いに甘んじていた若妻セーラが辛い事件の真相を乗り越え独り立ちしていくまでを描いているのだけど、ほどよくユーモラスかつしっとり落ち着いた味わいがあって満足のいく読後感だった。セーラの今後が気になるところだが、シリーズとして続いているので楽しみだ。しかも浅羽莢子訳なのは嬉しい。

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

世界的ベストセラーを今頃読んでみる。期待してたほど歴史ミステリーの風格はなくて、秘められた歴史の謎にからめて「現代人が出した」暗号を読み解く話だったのは少々肩すかしをくらった感じ(自分の読みたいものとは違ったという意味で)。タイトルになってる割にはダ・ヴィンチについても説明不足な気がする。同性愛者なのに総長って教義と矛盾してないのか? 聖婚の儀式はどうすんだろ? イエスが生身の人間だったという説もそんなに目新しくないし……。まあ研究書じゃなくて小説だからしょうがないのかもしれないけど、『鉄鼠の檻』くらい蘊蓄を盛り込んで読者をねじ伏せるように納得させて欲しかったというか。キリスト教圏の人にはまだまだ衝撃度が大きい話題なのだろうが、そのへんが抵抗なく読めてしまうだけにあっさりした印象しか残らない。なんで日本でこんなに売れたんだろう。