表題作は期待したほど黒くなくて肩透かしな感じもちょっとあった。ドリーマー杉田がぶち切れてリプレイヤー狩りをはじめたりしたら怖いな、どちらかが死んでもまた前日の記憶を残したまま甦るんだろうか……とか思っていたので。でも「神家没落」はよかった。意外性があってぞっとした。「幻は夜に成長する」は現在を最初に語らないほうが驚きがあって全体の雰囲気も締まったのではないだろうか。それにつけてもリオの祖母はいかす婆さんである。
義太夫に打ち込む青年
太夫の奮戦記。
文楽は
太夫・三味線・人形が一体となって作り上げるものなんだそうで、そんなことすら不案内だった私には新鮮で楽しめた。行き届いた取材により万事そつなく描いてて、
文楽と
近松がぐっと身近になった。ただどうしても
佐藤多佳子の『しゃべれども しゃべれども』とかぶるんだよな……。けっこう損だと思うのでミラ視点にするとか(それは無理か)ずらす工夫をしたほうがよかったかもしれない。それにつけても銀大夫はいかす爺さんである。先に出てる『あやつられ
文楽鑑賞』も読んでみたい。