読了本

有頂天家族

有頂天家族

人間と天狗と狸、三つ巴の大騒動。「平成狸合戦ぽんぽこ」をもっと面白く魅力的にしたような、なんて言ったらいけないか(あの映画もけっこう好きだが……)。森見作品では陰の気がこもったような『きつねのはなし』が一番気に入ってたのだけど、陽の気を放出しまくりなこちらもすごく楽しかった。構想が壮大で構成が緻密、京都という舞台もうまくはまっている。何よりキャラのひとりひとりが愛しくてたまらない。とくに弁天と海星スキスキ! 脳内で勝手に山田章博の絵で漫画化して読んでいたので一冊で二度おいしかった。すでに続編が連載中というのも嬉しい話。

ホルモー六景

ホルモー六景

怪作『鴨川ホルモー』のスピンオフ的な短編集。ページの都合かそこまで書く気がないのか、かゆいところまで手が届かないもどかしさが多少残るものの総じて面白かった。黄竜復活?!とか東京にも四神?!とか思いっきり鼻の先のニンジン状態なんだけど、ちゃんと続編で書いてくれるのかな。「長持の恋」はいっぷう変わったタイムスリップもの。人じゃなく板切れが時を越えて恋の橋渡しをする。クライマックスでちょっと涙……でもラストは安易すぎる気もした。万城目作品って書きすぎあるいは書き足りなさすぎと感じることがけっこうある。

豚たちの沈黙 (創元推理文庫)

豚たちの沈黙 (創元推理文庫)

主婦探偵ジェーンシリーズ第7弾。殺人が起こるのがやたら早くて何事かと思ったが、実はそれは煙幕で……。コージーものにしては事件自体はかなりあと味の悪い結末を迎えたけれど(むしろサイコホラーな感じ)、卒業パーティやパッツィ宅訪問なんかの日常生活描写の面白さでおつりがくるかな。それとやっぱりジェーンとシェリイのコンビは最高。ジェーンとメルのコンビ、でないところにこの作品ならではの味がある思う。