読了本

光車よ、まわれ! (fukkan.com)

光車よ、まわれ! (fukkan.com)

絶賛再放送中のアニメ「電脳コイル」は天沢退二郎のオレンジ党シリーズとオーバーラップするところがかなりあったのだけれど、雰囲気がより近いのはこの作品のほうかもしれない。こういっては何だがノベライズ版より近いと思う。小学6年生の子供たちからなるグループの指導者として不思議な老人がおり、水面を境に別の世界があったり、黒くてぬるぬるとした人影に追われたりする。ゆかの模様として浮かび上がる《光車》は暗号式を彷彿させ、龍子はイサコ、ルミはヤサコ、一郎はハラケンを思い出させるようなキャラ造形となっている。秘密の答えをめぐって対立する勢力やエピローグに図書館を持ってくるあたりもなんともいえず重なって感じられる。そして中心にあるのは未知の謎や恐怖への憧憬と郷愁なのである。ただ各作品のテーマカラーをあげるなら、コイルはたそがれの夕日いろで天沢作品は夜の闇色だ。だからコイル中盤以降の現実が闇に侵食されてゆく展開は心がふるえるほどに相通じるものがあった……のだが、それ以前にジュブナイルではこういうふうな世界の認識と物語の帰結が普遍性を持って存在するのではなかろうか。大黒小の子どもたちは天沢チルドレンの後輩であり兄弟であり仲間である。数十年の時を経ても道はつながり続いてゆくのだ。