突如現れた脅威の生命体“白鯨”と人間との攻防を描いた、『
塩の街』に続く近未来
自衛隊スペクタクルの第二弾。派手なドンパチはあまりなく、舌戦や頭脳戦中心で和解に持ち込むという展開なのが好みに合って面白かった。ディックを根気よく丸め込む高巳、真帆を搦め手から攻める高巳、ついに光稀を陥落させる高巳(ってぜんぶ高巳かい)。
有川浩の筆致は理性的なのになぜか感情がゆさぶられる。読んでてところどころ涙ぐんでしまった。ホットな魂でクールに描く、そんなところが彼女の魅力だ。
南方熊楠を探偵役に、弟子の太一をワトソン役にした
民族学色の濃いミステリ。誘拐事件の真相はわりとみえみえだったがそこはむしろ脇筋なのか。様々なトリックが駆使されててけっこう面白く読めた。危ういバランスで積み上げてきたものを一気に打ち崩す驚愕のクライマックスも個人的にはよかった。熊楠の異国の友人とは
チェスタトンのあの人なのか? こういうのってありなのかしら、『
漱石と倫敦ミイラ事件』みたいなのもあるけど。「福田太一」にもなにか仕掛けがあるのかな。