読了本

塩の街

塩の街

人間が塩と化す奇病に侵された世界であっても人々は命の限り恋をする――。文庫で出たときは気になりつつも読みそびれてたのを、続編や書き下ろし込みでハードカバー化したのをきっかけに再トライ。思わず満足のため息がもれるような質の高いエンタテインメントだった。「7seeds」に続けて世界が滅亡に瀕する話を読んじゃったのは少々きつかったものの、後味は悪くなかった(個人のレベルではね)。秋庭と真奈の間の距離がだんだん縮まっていく過程が丹念に描かれているのが悶絶ものの面白さ。でも塩害が二度と発症せず、ふたりが共白髪になるまで幸せに暮らせるという保証はどこにもないんだよな……とつねに物事を悲観的に見がちな私は思うのだった。それでも一瞬一瞬を大事に生きていければ、心残りにはならないだろうけれど。
『「大人にもライトノベルを分けてくれよー」の方針』を私は力いっぱい支持したい。ライトノベルを夢中になって読んでた頃の高揚感やときめきを年齢に関係なく味わいたい、そうは思っていても読みたいと思える作品を見つけるのは歳を経るごとに難しくなっている。なら小説でも映画でも大人向けの娯楽を好きに楽しめばよいではないか? いや、それはやっぱり代替品なのだ。私は「ライトノベル」を「読みたい」のだから。そんな、自分でもあまり気づいてなかった渇きを有川作品は癒してくれる。
ライトノベルってなんだろうか。一般の小説よりちょっと自由な物語、だろうか。たぶん成長過程でライトノベルを読んで育つと、成人後もなおライトノベルを欲する気持ちが残るのだ。ただ10代の頃と20代30代〜では必要とするカロリーや好みの味付けがかなり違ってきたりはするだろう。そのあたりの事情をかんがみたライトノベルが今後増えてくれるといいなあ。有川さんの担当編集者は当初読者層をうんと絞っていたようだが、今は事情も変わってきてるだろうか。