読了本・コミックス

山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)

山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)

連作のようで連作でない短編集。1話ごとの読みごたえが、ラインはシンプルなのにドレープをたっぷりとってあって布地も極上のを使ってるドレスみたいな豊かさ。たったこれだけのページから受け取る満足度がただものではない。マンガを読む幸せにしみじみとひたれる。萩尾望都はやっぱりすごい。表題作と「あなたは誰ですか」「くろいひつじ」「柳の木」が好き。とくに「柳の木」は、何てことのない話だし台詞もほとんどないんだけど、傘を差した女性の表情の移り変わりに引き込まれ、ラストでは胸を突かれた。

サムライうさぎ 1 (ジャンプコミックス)

サムライうさぎ 1 (ジャンプコミックス)

時代考証のことを言い出したらきりがない。でも時代劇でないと描けない世界があるんだよな……とあらためて思った。もし舞台が現代だったら、伍助がどんなにピュアながんばりやであってもアナクロなサムライかぶれの域を出なくなってしまう。だが時代ものだからこそありうるキャラになるし、そこにおいてすら愚直な世渡り下手と皆に思われているところに味がある。志乃も武家娘にはとうてい見えないけど、講武館の回とか結構じーんときた。なんちゃって江戸だが少年マンガとしてはアリだと思う。時代の情緒を懐かしむというより、今は忘れられた精神にわずかながらも触れようとするための作品なんではないかな。荒削りだけども光るものがあると思うので続きを楽しみに見守りたい。

女の子の食卓 3 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

女の子の食卓 3 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

生活の基本であるだけに食事はときにネガティブな強い記憶とも容易に結びつく。ある食べ物を口にするたびに、切なく寂しく悲しい気持ちが条件反射のように思い出される。食べるという行為は本能的には喜びであるはずなのに、同時にわきおこる相反する感情との狭間でゆれつづける人間の不思議さ……。さて同時収録の「この庭で宝石」。主人公視点だといい話になってるけど、逆の立場からしたら話したことがある程度のご近所さん(しかも部屋を覗かれたり)に怒鳴りつけられて、その場限りの安受け合いをして逃れただけでもおかしくないんじゃ……なんて考える私は心が歪んでいるのかも。