読了本

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

製鉄で栄えた山陰地方の旧家に暮らした祖母、母、娘三代の記。戦後から昭和、平成へと移り変わる世の中とユニークな女たちの人生が重なる。時代を反映してかそれぞれの人生はかなりバラエティに富んでいるのだが、そんな異なる女たちをもひとつに結びつけるのが“家族”の絆なのだった。物語を通しての語り手は孫娘の瞳子。祖母の万葉、母の毛毬の時代は伝聞口調でまんま戦後〜昭和史なのだけれど、自分史となると語り口がとたんにウエットになる。まだ歴史にならないナマの時ということなのだろう。だけど歴史もそのときはナマの時だった。神話・民話的な雰囲気が色濃い第一部、ひたすら猪突猛進な第二部はかけねなしに面白かった。第三部は「殺人者」という言葉の強さと千里眼奥様の幻視の謎解きとがうまく融合してないような感じがしたけれど、この不安定さ、危うい前向きさこそが現代の反映なのかもなぁ……はたして次の世代に私たちの時代はなんと評されるのだろう。

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

面白かったんだけど、今どきの高校生を描こうとしてちょっとすべってないかな? 木島が「そういえば最近女の子とやってない」と唐突に述懐するんだけど、それまで落書きとサッカーばかりにうつつを抜かしてたくせに一体いつ女の子と遊んでたんだよ、と思わず突っ込んでしまった。その後きゅうに似鳥ちゃんのことがあったり妹のことがあったりで、何だか極端な印象ばかりが残った。しかし佐藤さんていつも一人称で小説書いてるんだね。みのりが女言葉を使わないところはいいな。