読了本

モノレールねこ

モノレールねこ

短編集。加納作品はしばらく読んでなかったのだが、離れてる間に芸の幅が広がってたのかな。「パズルの中の犬」「シンデレラのお城」みたいなのは前から書いてたけど、今回は「マイ・フーリッシュ・アンクル」「ポトスの樹」などちょっと毛色の変わった話が多くてすごく面白かった。「バルタン最期の日」が妙にツボにはまって泣けてしまった……。「ちょうちょう」で胡蝶蘭の世話に口を出す蘭子が小姑のように言われるくだりがあったが、花屋の娘であった蘭子の名誉のために弁護しておくと、恵のやりかたはダメな育て方の見本市だったのだ(そうしてギフトの蘭は枯れていく)。

古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)

古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)

今はなき研究所が各地の旧家から借りてそのままになっていた古文書をひとつひとつ返却して廻った網野さんの行脚録。期限:半年と借用書を置いていったきり何年も音沙汰のない学者たちのことを腹に据えかねていた人もあったのだろうが、返却のためにわざわざ足を運んだ網野さん(しかも借りた当人ではなかったり)に詫びられては過去を水に流すほかなかったのだろう。責任を放棄することもできたのに、非難覚悟で地道な返却作業をつづけたのは素直に凄いと思った。

耳嚢〈上〉 (岩波文庫)

耳嚢〈上〉 (岩波文庫)

一日数ページ、2か月くらいかけてやっと上巻読了。古文なので意味をつかむのが難しい部分も多かったが、それでもかなり面白い。怖い話中心の「新耳袋」とは違い、根岸鎮衛のは興味の赴くままに風聞をかきとめた今で言うブログのようなもの。話題は何でもありだ。ネタとしてはB級なんだろうけど、猥談に笑えるのがいくつもあったなあ……長く生きてきて男色の経験だけはないからちょっくら試してみようとする老人の話とか。岩波文庫では絶版中、ぜひ復刊してほしい。