読了本

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-

サッカーで伸び悩んでいたおり、ふとしたきっかけから陸上に打ち込むことになった少年の姿を描く青春スポーツもの。さすが小説巧者の佐藤さんだけあって読ませる、と思っていたらいつの間にやら直木賞候補作に。最近の直木賞はこういう爽やか路線が好きだねえ。少年の一人称で展開するのだけど無理がない。それに走る描写がとても気持ちよさそう。三部作なので今後どういう展開になるのか、どういうオチがつくのか楽しみだ。
余談だがメロディ最新号ふろくの勝田文コミカライズ「しゃべれども しゃべれども」が良くて思わず原作を再読したくなった。映画化もするんだね。余談その2、顧問の三輪先生ことみっちゃんの脳内配役は大泉洋(天パーだから)。

銃とチョコレート (ミステリーランド)

銃とチョコレート (ミステリーランド)

古典的な海外児童小説を読んでるようで面白かった。文章も微妙に翻訳調で。うまいなあ乙一。展開はシリアスでも乙一らしいユーモアがそこかしこに散りばめられていて思わずニヤリ。かなり強烈な裏切りキャラが何人も出てくるが、あまりにも強烈なのでその悪っぷりがむしろかっこよく思えるほど。とくにドゥバイヨルの悪態がたまらん。激しい悪意を描いても殺伐とせず、ウエットにもならない作者の持ち味が炸裂しまくっていてエピローグではとうとう笑ってしまった。伏線もしっかり回収されてミステリ的にも満足。

プロローグはともかく本編が前作よりもつまらなくなってて残念。短編でサラッと流すかトーンを変えた別シリーズにすればよかったのではと思う。かりにも殺人事件が絡んでいるのに、一介の本屋バイトの要請に現役警察官が協力したりするのはリアリティがないよなぁ……終盤の“原稿”も何だか陳腐だし。湯けむり女子大生なんたら的な2時間ドラマのサスペンスものみたい。次作はもとの路線に戻って欲しい。