読了本

発掘捏造 (新潮文庫)

発掘捏造 (新潮文庫)

古代史捏造 (新潮文庫)

古代史捏造 (新潮文庫)

旧石器遺跡の捏造をスクープした毎日新聞取材班が追って整理する事件の発端と顛末。前者は疑惑の証拠固めをして世に出し大騒動となるまで、後者は捏造遺跡がぞくぞく明らかになり日本の旧石器時代研究が白紙に戻るまで(どうせなら文庫化のときに合本すればよかったのにね)。
ニュースを知った当時は脱力感に襲われたものだ。なんで20年以上もバレなかったのか、誰も疑わなかったのかと不思議でならないが、渦中にいると見えないものなんだろう。……で済ますわけにはいかないよなあ「考古学は科学じゃない」と言われたくなければ。新しい倫理の制定よりも、疑いをさしはさむ余地もないほど徹底した発掘手法を確立し、それにのっとってないものは発見として認められないことにするとか、これまで私物化してる場合も多かったらしい資料をちゃんと公開するとかいうことのほうが先決では? 通説を疑うのが学問の基本なのに、今までが大らかすぎ&風通しが悪すぎたように思う。などと部外者は考えるわけだが、言うだけなら簡単だからなぁ。
あと気になったのが藤村氏に対する断罪がトカゲの尻尾切りに見えること。実際にずっとひとりで埋めてきたのだとしても、彼ひとり罪を背負えばいいってことになるのか? というモヤモヤ感が胸に残る(そのへんのことは馬場教授あたりが座談会でずばずば斬ってたな)。また学閥に支配される考古学界の体質改善はどのように進んでいるのだろうか。事件から6年が経った今だからこそ、さらに全体を客観的に見据えたまとめが欲しい。

捏造問題の本を読んでいたら気分が落ち込んできた。なんか明るいの読まなきゃ精神のバランスがとれない、って時のとっておき。わはは、これは面白いや。深刻ぶってるのがバカに思えるあっけらかんとした明るさがいい。主人公のお気楽女子高生主婦の周囲で起こる事件にSF的な小ネタをたっぷり詰め込んであって、頭をほど良くほぐしてくれる。そして騒動が片付いたあとはおいしいビールをぐびっと一杯。シリーズものなのでしばらく楽しめるな、よしよし。