読了本

きつねのはなし

きつねのはなし

森見さんの作品をはじめて読んだ。文章がとても心地よく、水を飲むようにするすると頭に入ってくる。ただの水ではない。山々に磨かれ地下より湧き出た名水だ。水の湧く場所には独特の雰囲気が漂っている。静けさに包まれ小暗く湿って、神とも妖ともつかないものの気配がする。京都を舞台にした幻想的な怪奇譚は怖いというよりどこか懐かしく慕わしい。4つの短編は繋がっていそうで関わりあわず、そこがまた不安を醸しだすのだが、時系列が入れ替わっているのかな。頭で考えてはいけないのかな。芳蓮堂のナツメさんは天城さんとどんな取り引きをしたのだろう……。
ところで著者のブログはこの作品ではちらりとも見せていない諧謔にみちていて非常に笑える。引き出しの多い人だ。「もちぐま」いいなあ。

◆この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
http://d.hatena.ne.jp/Tomio/

◆京都・吉田神社の節分祭
http://www.geocities.jp/kyoto_yosidajinjya/setubunsai.htm