読了本

表紙が薄墨筆文字の新装版で読んでいるのだが書影は旧版のものしか出ないようだ。しかし昔のカバー絵は怖いなあ。横溝といえば村落の因習にまつわるドロドロ、と思っていたが今回のは東京の上流階級に起こる惨劇だったのでちょっと意外だった。金田一ものにはおもに都会のと田舎のと2系統あるらしい。どちらも日本の風土に根ざした特殊な閉鎖空間だからだろうか。結末まで一分の隙もない長編でとても面白かった。ラストがホントに凄い……。冒頭で帝銀事件をモデルにした事件が描かれ、これが本筋と密接にかかわってくる。当時の鬱々とした世相下では小説にも負けない奇妙な事件が頻発していたのであった。