読了本
- 作者: 宝珠なつめ,相沢美良
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
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- 作者: 山田英春
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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巨石は、数千年という時の経過に耐えた、彼らの文化の骨格のようなものだ。そこにどのような肉付きがなされていたのか、どのような衣装を纏っていたのか、知る手がかりは非常に少ない。その中で、ボイン渓谷は、最も多くの言葉を残した、それでいて、最も謎めいた都だ。それは「光の人々」とも呼ばれたトゥアタ・デー・ダナンが棲む不死の世界の伝説のように、巨石文化の黎明期に花開いた魔法の都であり、作り手の姿は内部へと続く通廊の奥の闇に消えた。(本文283頁)
美しい写真と文章で巨石文化の魅力を紹介する。ページの隅々にまで神経が行きとどいた充実の読み応え、だが私のような門外漢でも手に取って楽しめるくらいには垣根が低い。何より著者のスタンスが気持ちいい。へんに神秘寄りでもなく学者風をふかすわけでもなく、ただ「単にこの風景が好き」なのだ、と。文筆の経験はほとんどないとあとがきにあるが、オリジナルでこれだけ硬すぎずに程良く詩的な文章を書けたら素晴らしいと思う。面じゃなくて点で支えてるようにしか見えないウェールズはペントレ・アイヴァンのドルメン(テーブル状の岩)なんて本当に鳥肌ものだが、ずんぐりした岩の周囲に群れる羊とのショットはのどかすぎて愉快ですらある。スコットランドのトゥエルブ・アポストゥルズでの一枚は特に微笑ましい。
◆著者のサイト:Lithos graphics〜風景の中の石、石の中の風景
http://www.lithos-graphics.com/