読了本

ボトルネック

ボトルネック

自分が生まれてないかわりに死産だったはずの姉が生きている世界にとばされた少年の「ちょっと奇妙な物語」。SFやファンタジー、ミステリ、ライトノベルといった「どこかの枠」におさめるのをためらわせる、あやふやでいびつな雰囲気を持った話でもある。敢えて言うならホラー? リョウやノゾミの痛さを認識していながら揶揄するでも浸るでもなく一定の距離を置いて淡々と描写しているところが結構好みなのだが、耐性がついてなかったぶん最後の一撃は今もじわじわ効いている。想像して、はサキの口癖だったけれどそれすらも伏線だったなんて。私は想像してみる、サキはイチョウにどんな思いを託したのか。それはネガティブスパイラルにはまり込んだ弟の思考を助けただろうか。けれど何が止めを刺すことになるのかは予想もしていなかったに違いない。
以下、さらにネタバレ的に。
終盤のあれやこれやは私が何か読み違えているような気がしてならず、いつのまにかぐるぐる考えてしまう(じっくり再読したほうがいいかもしれない)。ひとつにはイチョウのことで、姉からのメッセージはリョウが思い巡らせたような方向を指し示してはいなかったんじゃないか、前後の文脈からしてもノゾミとは関係なくてサキと一緒にイチョウを見たときの思い出に繋がるんじゃないか? と思えてならないのだが、想像がまとまらず消えた語尾と言外の意味をまだ補えないままだ。
そもそもリョウがサキの心情を慮ったことがいままであったかどうか。彼は自分の経験に引き寄せて安直な結論を出したことしかなかったのではないか? そしてそれはサキのことだけに限らず、両親やノゾミ、兄に対しても同じだったと思う。想像したつもりでまったく姉からのメッセージを読み取り損ねていた、ここまできても想像力は育たなかった、そこから悲劇は生まれたのか? というかあの結末はほんとうに悲劇なのか。
誰かに決めて欲しかったリョウは結局どうしようと決めたのだろう。他人の命令に従って自らを消滅させてしまったのか、それとも飛び込みにうってつけの場所と飛ばされる前の状況はミスリードで、もっとポジティブな解釈が成り立つのか? さらにリョウに呼びかける声の意図を普通にホラー&スーパーナチュラルなものと受け取っていいのか、すべては妄想だったりしないのか。うーん、もどかしい……。