ケンイチとレナ、ユウスケの物語はいつのまにか著者のライフワーク・シリーズになっていたようだ。まだまだ幕は引かれそうにないが、終盤で待っていた展開には驚かされた。著者はどんな未来を切り開こうとしているのか。ただし淡々と描かれる登場人物の心の動きには少々ついていきにくい時があった。「あなたは小説を書こうとするほどには情緒的だった。しかしあなたは生粋の小説家ほどには感情を押し出せない」と話したクライヴの言葉は自己評価なのかと思ったほどだが、そのもやもやを吹き飛ばしたのは最終章の朗読シーンだ。ここは何度読んでも胸にこみ上げるものがある。行く手にどれほど暗雲がたちこめていても人は希望を見出しうるのだろうか……?
チェーホフの戯曲も併せて読んでみたい。カ
バー絵はハトに混じってア
ヒルが飛んでるところが意味深。ところで「メンツェルのチェスプレイヤー」での仕掛けは先に『
デカルトの密室』を読んでいると無効になってしまうので、巻末のシリーズ初出一覧の順に物語を辿っていったほうがいいかもしれない。
快作、いや怪作である。ホルモーとはいったい何だろう? 素材はファンタ
ジー&ホラーなのにテイストはスポ根ラ
ブコメという……何度吹きだしたことか。京都の大学生たちが真剣に使役鬼を戦わせてる図には妙なおかしみと迫力があるけど、スポーツに見えても異界ではまた別の様相を呈していると匂わせるあたりがちょっと怖い。オニの姿はイメージしづらいが頭が茶巾の
クリオネを大きくしたみたいなもんか? 土地勘のある人ならさらに面白さが増すだろうなあ。関西弁がかたくなに使われない(スガさんのメールにおいでやすとあったきり)のが不思議だったのだが、京都の大学ってそんなもんなんだろうか。ときどき出てくる
三国志のたとえが言いえて妙で笑ってしまった。もしかして作者は光栄ゲーム好きなのか。