読了本

風魔〈下〉

風魔〈下〉

下巻に入ると面白さにも加速度がついて一気に読みきってしまった。登場人物がとても多いのに、キャラの立ちっぷりと書き分けの見事さには眼を瞠るばかり。岩間小熊や梓衆の沙邏をはじめ、善人も悪人も小物も大物も豊富に登場しては、もったいないばかりにあっさりと死んでゆく。だが不思議と陰惨酷薄な感じはない。みな流れ星のように一瞬光って消えていき、あとは輝きの記憶が胸に残るのみ。キャラクターをいかに生かし、ふさわしい死に場所を与えるかに作者が心を砕いているからだろう。まっすぐで大らかで義の人である小太郎の波乱万丈の物語は、これだけ厚さがあってもまだ読み足りないほどだが、きっちり風呂敷をたたんだうえでさらに大きく広げてみせるエピローグは気が利いていてよかった。これはぜひ山田長政で続編を一本書いてもらわないと。

風魔―長編時代小説 (上)風魔〈下〉
並べるとちょっとかっこいい。