読了本

読み始めたら止まらなくなってしまった。たまらなく面白い。こういうジャンルの本は初めてなので多少とっつきにくくはあり、軍隊や武器の薀蓄などもほとんど呪文のようなのだけれど、きびきびと引き締まった簡潔な文章は読みやすくて好きだ。というか架空戦記って戦闘方面にやたら突出してる歴史ファンタジーとして読んでしまってもいいのかな? この物語、個人的には『銀英伝』や『十二国記』『氷と炎の歌』なんかにかなり近い感じである。登場人物たちも非常に魅力的。主人公の底知れない感じはとくにいい(しかしなんで首を絞めたがるんだろか)。剣牙虎と兵との深い絆も泣かせる。特に千早は素晴らしい。
コミック版を先に読んでいるため頭の中には自動的に漫画のキャラが浮かんでいる。それも読みやすさに一役かっているようだ。小説から入ったら直衛はまったく違うイメージになっていただろうし。1巻冒頭の書簡の書き手は誰なのかな。麗子かなぁと思っているのだが。あの書簡はコミック版にはなかった。未来が語られているのはちょっと嬉しい。先がまったく分からないのは怖くてダメなので。だからミステリの結末を先にのぞいてしまったりするんだよな……。
なにげに食べ物が美味しそうに描かれているところもポイント高い(戦争中は別として)。駒城家の食事風景がまず素敵で、飯は駒洲米の新米、赤根鱒の甘塩焼、薄垂をかけた緑菜の刻み、卵の素焼き。2巻ラストの同期会では、肴が川黒鷺の腿炙り、鱶亀の脇肉、中海鮭の蒸し焼き、沼長柄鳥の半熟卵、西領鳩の胸肉。酒は龍洲米酒にアスローン・モルトのケルミッシュ、等々。こういう食って飲んで語ってというシーンは大好きだ。産地をおろそかにしないあたりがまたニクい。