読了本

チョコレートコスモス

チョコレートコスモス

恩田陸版「ガラスの仮面」。恩田作品で演劇が関わってくるものは何故かハズレがないような気がする。小夜子とか木曜組曲とか……。今回も佐々木飛鳥の演技はいつも期待を裏切らず予想を裏切った。ヒナギクには鳥肌が立った。続編を書いてくれないかなあ。動き始めた「女二人の芝居」がすごく気になるし、素では没個性だった飛鳥の人間的成長も見たいし。でもって巽は神谷のライバルとなるのか、旗揚げしたばかりの劇団はどうなっちゃうのか。ただタイトルの由来はちょっと浮いているというか、取って付けたような感があった。色も香りも見事にチョコを演じている花=女優の象徴みたいなことを想像していたのだが、そっちかい。ラストだけ聖闘士星矢風味(違)。

外伝と気づかずうっかり先に読んでしまったけど、内容的には3巻までの話の補完だったので大丈夫(多分)。番外編とはいえかなり意味深で重要な情報が含まれているようだ。伏線がホントにいっぱい!状態。おちゃらけで終わるのかと思われたお見舞い編の終盤で、実は秀麗が訳ありらしいことが描かれたのが気になってしょうがない。秀麗の母親ってのは美女の幽霊と同一人物じゃないの? 雷と何か関わりが? 薔薇姫の物語があって、母親の名前は薔君で、なんだか老獪な某太師と同類っぽくて。じゃあその血を分けた娘は何者になるんだ……?

州牧を拝命した秀麗たちの危険な隠密行とその顛末。作者は今まで本性隠してたのかと驚いてしまうくらい話が血腥くなってきた。“殺刃賊”ヤバすぎ、燕青と静蘭の凄惨な過去には絶句。野望と陰謀の渦巻く茶州で、今までとは比ぶべくもないサイコな相手に秀麗がからめとられていく展開には思わずのけぞった。でもまあ割と予定調和的なところに落ち着くのかな、と思いきやまだまだ波乱は続きそうだ。“化け物”は真に妖魔と化すのか……? 茶州の禿鷹と南老師は心のオアシスだった。また出てくるといいな。

宮崎駿全書

宮崎駿全書

宮崎アニメ、ジブリ作品とひとくくりにされる作品群のなかで、長編9本短編9本の「宮崎駿監督作品」について豊富な資料をもとに懇切丁寧にまとめている。短編はジブリ美術館内のみで上映のものが多く私はひとつも観ていないのだが、長編はすべて、カリオストロ以外は劇場まで足を運んで観たのだった。なんだかんだいって宮崎駿のアニメは面白いし好きなんだよな……とあらためて自覚した(歳とともに批判的にはなっているものの)。
あらすじから製作の経緯、宣伝と興行、海外の反響、国内での主な批評まで網羅的に解析してありとても興味深い。客観的であろうと努める姿勢にも好感が持てる。トトロのテレビ放映における視聴率のよさに「DVDだって出回っているのに、何回観れば気が済むんだ」と他局の関係者を呆れさせた、というエピソードに思わず笑った。そういえば「なんどめだナウシカ」ってのもあったっけなあ。