「水上の夕映え」がとくに面白かった。答えはだいたい想像がついたけれど、ブラック・ウィドワーズ・メン
バーのかけあいとゲストの陥った状況、ヘンリーの鮮やかなお手並みのからみが絶妙だった。「封筒」とネタがかぶってしまったのはご愛嬌、
アシモフも筆の誤りというところか(悪びれないところがまた好きだ)。「幸運のお守り」「三重の悪魔」「秘伝」もよかった。ミラノ・レストランで出されるご馳走も毎度すばらしく、思わず美食に走りたくなる。巻末の「生きてこの世にある限り」シリーズを書き続けるとの言葉と、
有栖川有栖の解説を読むにつけ涙がこぼれる。また1巻から読も……。