週末のテレビ

アニメ「蟲師」、第15話「春と嘯く」 。いやー楽しかった。久しぶりの明るい話に心も浮き立つようだ。ヒロインがギンコと直接からむ話も久しぶり、というか初めて? 「旅をする沼」のいおが惹かれていたのはギンコじゃなくて水蠱のほうだもんな。すずは文句なしに可愛かった。素朴で健気でしっかりもので。やんちゃなミハルが穴から「こーいうとこにいっぱいいんだ」と蟲を引っ張りだすシーンには思わず吹いた。ギンコの最後のセリフが意味深で、優しくしんみりとした余韻を残す。「やまねむる」などと合わせるといろいろ思い巡らせてしまう回でもある。
ギンコの着ている紺のロングコートがなんだか妙にかっこいいな。茶色のと着まわしてるらしい。原作だともっとダボッとした感じなのだけど、アニメのデザインはいくぶんスリムなラインで丈も長め、後ろがスリット開きになってるのが現代風な印象。それにタートルネックのインナーとオフホワイトのパンツに黒手袋をコーディネートしてんですよ? たとえ足元がわらぐつだろーと、こんな着こなしの男が村に来たらすずじゃなくてもグラッとくるかも。ただしミハルと枕を並べて仮死状態になってたのはかなりおまぬけな姿ではあった。
セリフから情景までことごとく原作準拠で驚くほどだ。でもマンガではコマの大きさによって切れたり、ざっくりラフに描かれたりした部分もあるし、行間ならぬコマ間に省略された動きなんかもあるわけで。そこを巧みに補って、補ったことなんか感じさせず自然に観せてくれるから嬉しくなってしまう。登場シーンで木登りするミハルが木の根元にわらぐつを脱ぎ捨てて裸足になってるのとか、牛が食べてる餌に寄ってくるヤギ、眠りに入る小動物が木からボトッと落ちる前にイキイキ動いてる姿を見せとくのなんかは気配りが行き届いてるなあと感心した。
「春まがい」の描写は期待を裏切らない美しさ。小鳥の声や水音なども耳に快いし。美術も音響もいい仕事をしている。マンガ版のカラー頁ではギンコの足元に咲くのはピンクのスミレだったが、アニメではカタクリになっていた。カタクリも春咲く花である。それから梅にモクレンに桜に……。フジに似た白い花はニセアカシアかもしれない(若い花房をてんぷらにすると美味)。が、これとホタルブクロはどっちかといえば初夏の花のような気も。冬景色も綺麗だったなあ、手前と遠景で雪の降る速度が違うのがすごいね。