読了本・コミックス

青い花 1巻 (F×COMICS)

青い花 1巻 (F×COMICS)

それにしても引き出しの多い作家だ。吉屋信子の「花物語」は中学か高校の頃に読もうと思いつつ挫折したのだけど、今なら読めるかしら。あのころはこういう“小さな花”を愛でるという気持ちがぜんぜん分からんかったのだ。屈託のないあーちゃんがすごく可愛い。彼女はこのまま負の感情に汚されないで人生を送りそう。逆に屈託のかたまりなふみちゃんは何とも痛々しい。イトコの千津はホントにひどい、杉本先輩もふみが好きで恋してるというよりはただ愛でているだけみたいなのが先行き不安……と早くもふみちゃん応援モード。

紳士同盟」の回はよく出来てて思わず涙ぐんでしまった。ほんとにこんな偶然があるんだね。「オーシャンと11人の仲間」と一緒に観比べてみたい。「ミスタア・ロバーツ」も面白そう。ラストシーン知ってしまったけど、そこが話のキモじゃないものな。これまで洋画ばかりだけど邦画はネタにならないのかな。野村マキノがただ華添えてるだけじゃなくて、もっと話にからんで存在感が出てくるといいなと思う。

体が透ける奇病にかかっている少女、しずか。病が進んで完全に透明になってしまったら自分が存在してたことなど忘れられてしまうかもしれない。女優になりたいという夢も諦めなければならない。そんな恐怖に怯える彼女の支えになるのがちょっとおばかな単純少年、唯見だ。彼の名前が「タダミマモル=ただ見守る」というのはご愛嬌だが、ふたりの淡い想いは読者の心に爽やかな風を吹き込む。ガラス工芸家の恵子の話は良かったな。


◆コンプレックス・プール
http://www2.odn.ne.jp/~cbh42840/index.html
漫画家・戸田誠二さんのサイト。作品のほとんどをWeb上で公開している。ひとつ読んだら止まらなくて長い時間をかけて読みふけってしまった。「唄う骨」の帯にかかれたこうの史代さんのコピー以上にふさわしい言葉を思いつかない。描きおろしがあるなら単行本を買おうと思う。