読了本

琥珀枕

琥珀枕

徐先生と弟子の昭之は日々山に登り、中腹の遠見亭から人々の暮らしぶりを眺めている。実は歳を経たすっぽんの妖怪である先生には世の中のことが手に取るように分かるし、県令の息子である昭之には人間の欲深さを見聞するのもいい勉強になるのであった。……いやー、とっても面白かった。中国幻想譚でもあり、公案小説ふうミステリでもある連作短編集。醜悪な犯罪について飄々とした爺さんと純朴な少年の目を通して語り、ユーモラスな話に変えてしまう手腕がみごとだ。昭之の両親の馴れ初めの謎かけ話がとくに良かった。連作の締め方も秀逸。


雑誌いろいろブラウジング。「ぱふ」は石田敦子インタビューも面白かったが、今月から連載が始まった雁須磨子のマンガがもう最高。地元福岡に縁の深い黒田藩に関する渋いエピソードで4頁。名槍日本号を飲み取る武士と、まんまと持っていかれた武士のやりとりにもウケたけど「お椀……ですよね……」「合子(ごうす)じゃ……」と鎧と問答するのはいま思い出しても笑いが止まらない。なんなんだろうこの可笑しさ。来月がすげー楽しみ。しかしコンセプトがよく分からない連載だな。時代ものの話題が続くとも思えないが、次は何を持ってくるんだろう?
アニメージュ」は蟲師の監督・長濱さんインタビュー2頁が読み応えあった。すんごい幸せなアニメ化だった、いや現在進行形で“である”よなあ。ぜんぜんクオリティが落ちないどころか神がかってきたのでマジでスタッフを案じているところだ。アニメ版蟲師は日本も捨てたもんじゃないなと思わせてくれる好例のひとつと言えよう。「ダ・ヴィンチ」は原作者の漆原友紀メールインタビューを掲載。「やまねむる」が作者もいちばん好きなんだそうで、いい出来で良かったなあと。作者も作り込んだという淡幽が登場する「筆の海」は長濱さん本人が監督で作成されることが確定。箸でつまんでびゅるん、が今から楽しみ。