読了本

全集文庫版の第一・第二巻は「警視庁草紙」上下で、今年はこれが私の年越し本だった。山田風太郎の明治ものは面白いと定評があるが、なるほど面白くて一気に読んでしまった。薩摩出身の川路大警視ひきいる警視庁のポリスたちと、隅のご隠居こと元南町奉行・駒井相模守と交わる反体制の面々とが繰り広げる攻防のゆくえやいかに。
歴史上の著名人、文化人がたくさん出てくるのが楽しい。なんといっても幕末の風雲児(の生き残り)たちと明治の大文豪たちがともに生きて活躍していた時代である。しかし明治の元勲も風太郎にあっては形無しだなあ。とくに忘れがたいのは希代の毒婦といわれる高橋お伝を題材にした一編。えもいわれぬ凄みがあった。