正月のテレビ

ラソンだの駅伝だのが大好きな親父にチャンネルを占領されてちょっとぶーたれてたのだが、まあ観たい番組も昼間はたいしてなかったので、だらだら本を読みながらチャンポンで酒を飲んでいたら体調をくずした(バカだ)。ただ箱根駅伝の復路アンカーのとこだけは思わず観入ってしまった。亜大の走者について家族は走り方がナヨナヨしてて女の子みたいなどと好き放題言っていたのに、ゴール間近まで変わらぬ余裕の走りっぷりには感心することしきりだった。あんなに平然かつニコニコしながら走ってるランナー、私もはじめて見たよ。
コナン・ドイルの事件簿」はかなりツボだった。内容が濃くて、怖さにぞくぞくする。五週じゃなくて五夜連続なのも嬉しい。観るの大変だけど。まだ2話目までしか観てないが、どの犯人も○○されないのか? ドクター・ベルの手法は活かされないのか? そのフラストレーションがドイルにホームズものを書かせた?(でも冒頭でホームズ死亡に抗議する読者に押しかけられてたが)。あと大河ドラマ功名が辻」の番宣を何度もみたけどかなり面白そうだね。千代と一豊、なかなか役にはまってた。楽しみ。

さて、待ちに待った「新選組!! 土方歳三最期の一日」。けっこう泣く気まんまんだったのだが、あざとい泣かせ所はほとんどなくて、歳三の「最期の一日」を淡々と描いてた。悲哀色も薄かった。だが密度は濃い。要所要所でじわりと効いてくる。たった1時間半という短い尺のなかにぎゅうぎゅう詰め込めるだけ詰め込んで、役者も視聴者も休むヒマなし。せわしないとは思わなかったが余韻にひたる間もなかったので、後日おそらく出るのであろうDVDには未収録シーンをなるべく追加しカットシーンも復活させてほしいと思う。
もっともジーンときたのは、榎本のつくる新しい国では近藤は罪人じゃないんだなと念押しし、それどころか功労者だと言われて歳三がうん、とうなずく場面。そうかそこがあんたの一番大事なとこなのか、事ここに至っても、と目頭が熱くなった。大鳥さんの豪快なジオラマひっくり返しも無念さがひしひしと伝わってきたし。もったいない!と思わず口走ってしまったけれど。ぼろぼろになった誠の旗もそうだが、良くできてる小道具なのに思い切りよく壊してしまうところがいっそ潔いというか。こちらの抱く続々編への未練もばっさり断ち切られるようで。
ムックで言及されてた大鳥のモミアゲいじりがどこで出てくるのか楽しみだった。選挙のことをバラされるあのシーンは家族みなで大笑いした。声がひっくり返る吹越さんグッジョブ。愛之助さんも南野陽子もいい演技してた。「鵺」や「サンドウィッチ」といった伏線もたくみに回収されててちょっと興奮。こういうの、おととし三谷さんは1年という長い尺を使ってやっていたんだよな。その尺のなかにこの続編も含めるならば「ロマンチ」や「シェイクハンド」なんかも伏線の回収といえるだろう。なんとも感慨深い。
しかし土方に妖怪ヌエあつかいされた薩長土の人はこのドラマ観てても複雑だろう。榎本も維新後の薩長に対して皮肉っぽいセリフを吐いていたし。私は言いえて妙だと思ったしよくぞ言ったとも思ったけど、ヒヤリともさせられた。またどこぞの国会議員が文句をつけてきたりしてね。幕末・維新はそう遠くない昔で、今に至るまでいろんな思惑を引きずっている時代なだけに虚構として扱うのが難しい。そういうとこ、自称・小心者の三谷さんは勇気と信念をもって描いていてえらいと思う。
難をいえば、戦闘のシーンが「そのとき歴史が動いた」の該当回で補完するとちょうどいいくらいに少なくて迫力を欠いた点か。軍議のシーンが熱かっただけに残念だ。もっと時間と予算があったらな……。でも死に場所を求めて戦っていた土方がディスカッションを経て生きるために、と変わるくだりはみごとだったし、進軍してくる官軍歩兵エキストラの多さも不隠さを醸し出していてよかった。榎本軍はほんとに多勢に無勢だったんだね。時おり挟まれる三角帽子の兵隊たちの隠密行動は何だ? といぶかしんでいたら土方が置いてったカンテラ蹴っ飛ばしたもんだから背筋が凍った。
ラストの近藤処刑時の使いまわし映像はファンサービスとしても微妙だったのでは。それにちょっと使い方が雑な感じ。これまでずっと細やかにやってきたのにもったいない。あれなら声だけとか逆光の人影だけのほうが雰囲気あったかなと思う。あと会津での回想から戻った土方バストショットは馬に乗ってるふりの演技がわざとらしかった。回想からいきなり馬を疾駆させてる場面に戻さずワンクッション、というのはいいと思うんだけど。撃沈された敵の軍船から吹っ飛んできた装飾文字についてなど、史実をいつもみたいに新選組紀行として解説してほしかった。
それにしても嘘みたいにあと味の良いラストシーンだった。悲しくはあっても、五月の蝦夷地の陽光あふれる緑の野原を、ジョン・健・ヌッツオが高らかに歌い上げるテーマソングにのってどこまでも、豆粒大、ケシ粒大になるまで駆けていく市村鉄之助に感無量だった。鉄之助役の子の演技がたいそう巧かったこともあり、哀しみに落ち込まないで気持ちよく観終えることができた。欲を言えばおみつさんにコルクを渡すところまで……ってやっぱり放送時間が足りなさすぎだよなこりゃ。