読了本

箪笥のなか

箪笥のなか

へんなものを見てしまう体質の弟とその姉のちょっとトボけた幻想譚。独特の文体で最初は雰囲気がつかみにくかったが、後半は慣れてきたのか面白く読んだ。ヒロシマの記憶や母娘の確執といった現実をちらりと挟み込みながら展開していく後半はメルヘンさに微かな生々しさが加わってちょっと変わった味わいだったし。じつは義妹は弟が幼い頃から付き合いのあった蛇の化身……というオチになるのかと思ったんだけど、物語は最初よりいくぶんリアルなところに着地したようだ。

リアル樹教授@もやしもん、と囁かれているらしい小泉先生の新聞連載エッセイ。食べ物の美味い不味いを表すのに決して逃げの文章は書くまいと常に心がけているというだけあって表現は個性的かつ情熱的。頻出する「うまみがチュルリチュルリ」「コクみ」という言葉にはこの本で初めて出会った。油っこい料理の話が多いのでちょっと胃もたれする感じもあるけど、サバ水煮缶の猫飯とアスパラ・ザーサイ汁、酸菜湯in牛肉は試しに作ってみたい。さあ次は発酵学の本を読もうっと。