読了本・コミックス

アンダーカレント  アフタヌーンKCDX

アンダーカレント アフタヌーンKCDX

アフタヌーンでは途中から読んだのでコミックス化がとても待ち遠しかった。ページを繰りおわった後のこの気持ちをなんと表現したらいいのだろう。問題作や感動作というわけではない、だがいつまでも胸に残るものがある。日常のなかに溶け込む微かな不安、清々しさと同居する寂しさ。ひとりよがりな表現がなく、間の取り方が絶妙で、一話の中で何度も吹きだしたりギョッとしたり涙ぐんだりしてしまう。飛んでいく風船に「芝居がかったこと好きだよね」ってツッコミ入れるような、自作に酔ってない(けど醒めてるわけでもない)とこが好ましい。
リアルな銭湯描写。コマごとの描きこみも細かいだけでなく雰囲気がある。人が失踪する理由を推測するシーンで二本の電柱と錯綜する電線が描いてあるのとか、自然なのに意味深だ。小道具の使い方もうまい。かなえが読んでる雑誌の記事がいつも楽しみだった。映画っぽいけれど映画とは違うなあ、と思うのは人物だけでなく民家のたたずまいや動物の表情までにも作者の意思が感じられるところ。どんどん目つきが悪くなっていく飼い犬とか、シゲ爺とシンクロする懐の猫とか、ふつうは演技させられないものにも神経を行き届かせることができるのが漫画の強みだ。
描く方はさぞかし大変だろう。発表の間隔はゆっくりでも構わないから、漫画はずっと描きつづけてほしい。そして是非またいいもの読ませてください。ついでに堀さんカムバック。後釜になってよー。……と哀しくなりながらもう一回最初から読み直したら、あれっ? バス乗らなかったんじゃないか! そのことに気づいたとたん、底流から浮上してきてしまった私であった。追記。アフタ買ってきた。まだ工場行ってなかった! 万歳! 

出たねえ〜。メディアファクトリーさんありがとう。「ヒニクの嘆」なんていま読んでも面白いけど、いまはもう分からなくなってしまった時事ネタがけっこうあるな。人形劇三国志だってすでに知らない人も多いだろうし。江森三国志ネタは……私は劉備くん理解のために(!)数冊読んだから何となくわかるけど。みなもと太郎の『風雲児たち』みたいに作者注がついてたらよかったかもね。あとがきにはかなりしみじみしてしまった。李氷どうなるのかな……。