読了本

僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)

僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)

叔父・網野善彦への追悼の意をこめて語られる家族との思い出話。網野さんのイメージがずいぶん変わってしまった。歴史書からはなかなかうかがいにくいけれど、網野さんてとても上品で優しくて辛抱強くてチャーミングな人柄だったのだな。中世の意味を大きく転換させた冒険的思考の網野史観、といわれても今まであまりぴんと来なかったのだが、おかげで何となく腑に落ちたように思う。「非人間=聖なるもの」という考えが南北朝を境に「非人間=賤しいもの」と逆転していったことについて語られるくだりはすごく面白く、またなるほどと思った。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

古典部シリーズ第一作目。高校に入り古典部に入部したホータローたち4人は妙ないきさつから埋もれた過去を掘り起こすことになる。『クドリャフカの順番』では4人が交互に語るスタイルだったので第一作目からそうなのかと思っていたが、違うのね(千反田えるのパートが好きだったので残念)。ちょっとほろ苦い結末だが読後感もよくて面白かった。が、スニーカー文庫のおもな読者層である若い人たちはもう知らないかもしれない昔に流行った某アイドルの歌が脳裏にこだましてシリアスさがぐっと減じてしまったのはたぶん私だけではあるまい。