読了本
- 作者: ドロシイ・L・セイヤーズ,松下祥子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/06/23
- メディア: 文庫
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五年も求婚しつづけていたハリエットに『学寮祭の夜』でオーケーもらった閣下(これも“御前”でなじんでるんだよな)、ハネムーンではもうデレデレである。バンターのスピーチも傑作だったが、その誰はばかることないいちゃつきっぷり、とても四十五歳とは思えない閣下の子どもっぽい振る舞いには思わず笑ってしまう。滞在中の<トールボーイズ>で素っ裸を村のおかみさんに披露し「胸毛がぜんぜんない!」なんて噂され、煤のつまった煙突が通ったといってはワイワイ大はしゃぎ。しかしそれも死体が発見されるまでのことだ。おかげで新婚旅行に来てまで探偵をするはめになる。
印象的なのは犯人がつかまったあとの展開である。当時のイギリスは裁判が迅速で、しかも有罪と決まったら即、絞首刑であったらしい。ピーター卿はそのことで病的なまでに苦しむ。じっさい彼は病気なのだ。戦争の後遺症で誰かを死地に追い込むことが耐えられない。たとえ悪人であろうとも。だがバンターの変わることない献身とハリエットの愛情はピーター卿の心の傷を癒すだろう。生まれたての赤ちゃんみたいなまっさらな状態には二度と戻らないにしても。この物語は前半ほとんどコメディなのに、終盤では非常にしんみりとさせられる。
イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む (平凡社ライブラリーoffシリーズ)
- 作者: 宮本常一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
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旅の大家・宮本常一が解説する名紀行文。もともと若者向けに開かれた購読会の談話をまとめたもので、文章も口語体だからすごく読みやすい。ロッキード事件にしばしば言及するのが時代を感じさせる。このまえ読んだ『イトウの恋』の副読本として手に取った。イザベラ・バードが日本に来たのは47歳のときだという。そしてイトウは18歳。すごい年の差カップルだったんだな。親子ほどというよりはむしろ祖母と孫に近かったのか。宮本さんがこの文章を語った頃はまだ伊藤は歴史に埋もれた存在なのだった。すでにイトウを身近に感じている身にはちょっと不思議な感じがする。さあて『日本奥地紀行』も読まないとな。