読了本

漢方小説

漢方小説

西洋医学に匙を投げられた(というほどの難病ではないが)女性が漢方医と出会って癒されていく話。たしか前回(第132回)の芥川賞候補だったのだよね。……え? 直木賞ではなくて? さくさく読めるし笑えるし、ひねった表現はあるけど難解ではなく、ヒロインはさっぱりした性格で漢方のウンチクも面白いのに。エンタメにしては展開が平坦だけど、そのゆるーいとこがたまにはこういうのもいいなあと。作者はシナリオライターだそうだから自伝的なものを書いても自然に読み手に対するサービス精神が働いてつい面白おかしくなってしまうのかもしれない。ぜひコメディを書いてほしい。

エイラはジョンダラーの故郷をめざして長い旅を開始する。すごーくたくさん先史時代のウンチクを盛り込んでいるのだけど、それでリアリティが増すかというと、かえってドラマが間延びしているんじゃないか。これだけ分量があるのにたいしたエピソードもなかったような、と思ってしまうわけだ。第一部がいちばん物語が引き締まってて面白かったなあ。訳は読みやすくていい。旧版エイラ(中村訳じゃないほう)のさかりがついたティーンエージャーみたいなしゃべり方には辟易させられたので。ただ金原瑞人っぽさがあまりなかったのは残念かも……今回は監修みたいな立場なのかな?