とても読みやすく、そのうえ愉快な対談本。数学はいまだに苦手だし数式もぜんぜん理解できない私だが、美しい数式と醜い数式の違いは何となく分かるし、ロマンチストな数学者の逸話に涙ぐむ藤原先生の気持ちはよく分かった。
ラマヌジャンと「谷山=志村予想」のエピソードも泣ける。かつてヨーロッパ人にとって
虚数を認めるのは精神的苦痛だったというくだりでは小川さんと一緒に爆笑してしまったし。世の数学者もだが何より藤原先生がかわいいな。小川さんの当意即妙の受け答えも素敵だ。苦痛といえば
南伸坊のおざなりなイラストがちょっとね……もう少し丁寧に描いてよと。
四方八方で難題が持ち上がっているところへ
バーティーが首を突っ込み、
ジーヴスに張り合って助言を拒み続けた挙句にっちもさっちもいかなくなってしまう。面白いんだけど長編だと繰り返しが多くて冗長に思えてしまうのが難。こういうスタイルは短編のほうが切れ味よくいくのだろう。そのことは訳者もあとがきで書いていたが。表彰式の場面ってそんなに傑作かな? イギリスのユーモアセンスは時に辛辣だからなあ。
ジーヴスの鮮やかな手並みを拝見するまでが長かったものの、女傑なダリア叔母さんの毒舌はいつも愉快だった。甥をがっついたコブタから最終的には災厄をもたらす
アッティラまで格上げしてなぶる様子には思わず笑った。