読了本

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

不思議な能力を持つ一族“常野”にまつわる逸話を、かつて彼らと関わりをもった女性の回想録として描く。明治末期という時代背景をうまく語りこなしているとはいいがたいものの、災害パニックの場を描くのは相変わらずうまい。終盤のクライマックスシーンは真に迫っていて思わず涙ぐんでしまった。登場人物がひとり減りふたり減りしていくラストはなんとも物寂しく、峰子が廣隆と結ばれなかったことも手伝って気分が大きく落ち込んだ。『光の帝国』を読んだのがずいぶん前でもう細かい部分を忘れてしまっているのだけど、一部共通する人物などはいただろうか? 光比古あたりとか。再読してもいいのだがこのシリーズの雰囲気が実はちょっと苦手。

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

割とブラックユーモアがきいてて全体的にグロめ。でも軽妙な訳のおかげだろうか、ちょっと守備範囲外だなと普段なら敬遠する系統の話ばかりなのに何故か読むのをやめられず最後までページをめくってしまった。いつSFになるんだろうと思いながら。SF作家の非SF短編集であると知ったのは解説を読んでからのこと。『不思議のひと触れ』は未読で、わざわざ間口の狭いほうから入ってしまったらしいが、スタージョンの奇妙な味わいと<奇想コレクション>の魅力はしっかり堪能した。“てやんでぃBaby”みたいな「取り替え子」と不条理な展開の「ニュースの時間です」が特に好きだった。表題作は恐い。間違ってもこんな親切は受けたくない……!