いや、これ内容が盛り沢山で最高だわ。この頃からすでに
もやしもんの萌芽が……と思わせる「フランスの国鳥」のニワトリ親子と“うなぎ”が可愛いなあ! 「彼女の告白」「自分を信じた男2」「テレビショウ」にはオチがつくまで翻弄されまくったし、劇画タッチでその実ギャグという戦国風雲録「急げ隼丸」や大タコ騒動顛末記「よかったね」は妙にツボにはまった。“まじめ路線”な「ただそれだけで」も読後感がよくて好きだ。さすらいの花屋さんてのはいーねぇ。「バス停」もまじめ路線かな? 「趣味の時間」は読み直して二度おいしかった。笑った。
スクリーントーンをほとんど使わない描き込みの細かさに惚れる。この本ではギャグはお休みで、ひたすらシリアスかつシビア。表題作の主人公はなぜか
新選組の
近藤勇だ。幕末の英雄たる龍馬はどこに? その理由が逆説的に明らかにされた瞬間、背筋がぞくぞくした。恐ろしい話だ。
大河ドラマの印象が薄れたらまた読んでみたい。血生臭くものどかな「神の棲む山」もいいが、いちばん好きなのは「
二本松少年隊」。漫画の中に切り取られた
飯盛山における歴史のひとこまは情け容赦がない。小学校の林間学校で
会津若松の史跡を見学したときの戦慄を思い出した。