読了本

屋根に登って青空を見上げながら煎餅をかじる若い男女、しかも足が滑って抱き合ったまま転びそうになったり、なんてくすぐったくも可愛いシーンを殺人やら捕物やらのあいだに挟み込む藤沢周平が好きだ。せっかくの非番だが家にいても叔母にこき使われるだけ、叔母のくれる小遣いは少なすぎるからそうそうご奉公することもないな、とかいって家にも帰らず人助けのために奔走する若先生。それこそタダ働きだっつうの! とつっこめるキャラを主人公にする藤沢周平が好きだ。あと風邪をこじらせた子どもを芥子の温湿布で治療するシーンが面白かった。近代以前の医療って根気と創意工夫の世界だな。