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クジラの死体はかく語る

クジラの死体はかく語る

クジラの死体解剖によって分かるのは地球規模の環境汚染がクジラに深刻な影響を及ぼしているということだ、と著者は語る。とうぜん人間だけが安全地帯にいられるはずもないわけで。「クジラは頭のいい動物で絶滅危惧種なんだから保護しなきゃ」とか「日本の大切な食文化だし過去には欧米も捕鯨を行っていた」とかいう意見はあるイミ脊髄反射的で、そのためにいつまでも平行線をたどるのだろうと漠然と思っていた。しかし時代をかんがみれば、環境指標動物としてのクジラ調査という視点は既存の意見とは次元を異にする“最優先項目”であろうし、また非致死的調査が科学的に有効であることが証明されているなら、日本の対応も捕鯨拡大から保護へと変化してしかるべきではないのかな……そうしないのは経済的な理由なんだろうか。帯の謳い文句は汚染の恐怖しか語ってなくて片手落ちなかんじ。食の安全という点で牛肉に劣らないほどの危機的状況なのは確かなようだが。